研究内容を一言でいうと?
地球上の有限な資源をいかに有効活用するか、あるいは、自然と人が共生するにはどうすればいいのかを、”ライフサイクル”の観点から広く見渡し、持続可能な社会や暮らし方につながる研究をしています。
今、力を入れていることを例にあげると、「環境に配慮した行動」と聞くと、我慢しなくてはいけないようなイメージがあるかと思います。そこをおもしろく楽しく、さらに無意識に行動できるような仕掛けづくりをしています。
例えば、ゴミの分別は面倒臭いけれど、おもしろがって集める方法を考えています。プロジェクトでは小型家電リサイクルで集めているものの種類の絵が描かれているショッピングバッグを配りました。家に一枚あるだけで、「これもリサイクルできる」などの気づきにつながりつつ、そのバッグに集めることができます。
研究者として幸せな瞬間は?
学生と一緒に新しいものを発見したり、思いついたりした瞬間です。
スマートフォンを分解する授業では、学生一人ひとりが、目をきらきらさせながら分解するんですね。初めてだと1台を分解するのに30分くらいかかるのですが、それを別の視点から見ると、回収できる資源の価格よりも人件費のほうがずっと高いことに気づいたりします。
リサイクルの現場ではこういった作業が地道に行われていることを知り、今まで自分たちと関係がない仕事だと思っていたことが、実はすごく社会の役に立つ仕事だったんだ、という認識に変わったり、ただ捨てるだけではもったいないという気づきになったり。実際に、モノを見て、考え、気づかせてくれたとき、学生と一緒になって学ぶことができたという達成感があります。
学生と向き合うときには、人と人として対面することを心がけています。寄り添えるところにちゃんと寄り添いたいなと思っています。
おすすめの映画は?
ジュリア・ロバーツさんが主演した『エリン・ブロコビッチ』です。
この映画は実際、アメリカで起きた環境汚染を告発した女性の実話をもとにしています。主人公が弁護士の事務所で働くところから始まるのですが、大手の企業が化学物質を適切に処理しなかった結果、土地が汚染され、その事実を暴いていくといった内容です。
私はこれが基本だと思っています。暮らしの中のちょっとした違和感、例えば鳥が少なくなったとか、花が咲いていないとか、夏がどんどん暑くなっているとか、それがなぜなのかを調べ、何かの事実にたどり着くということ、それらを地道にやっていくということが大切なんだと気づかされる映画です。
自分のことだけでなくて他人、生き物への想いがあると、たった一人でもこんなことができるんだ、と、とても深いところを感じました。
地球上で残したいものは?
多様な景色、あるいは資源、鉱物、生物…すべてですね。
そのためには地球を汚染せず、また資源が循環し続けるような仕組みが必要だと思います。
一方で、資源のメリットとデメリットを知ってほしい。鉛には中毒性があるので、使い方によっては健康被害を引き起こすこともありますが、実はすごい材料で、地上に大量にあり、使い勝手もよく、加工にも適しているんですね。なのでちゃんと回収して、いかに正しく循環させるかが大事だと思っています。
地球の好きなところは?
青いところですね。青とは水のことです。
水資源があることで、それを中心に多様な生き物がいるというところが好きです。
一方で、その水資源が危機にあることをもっと伝えたいです。海洋汚染の課題もありますが、そもそもの地上の人が利用できる水は少ないので、それをめぐっての課題が、今後、深刻になっていくと思います。水がないと人は生きてはいけないですからね。