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SDGs
SDGsの策定と活用の動き
SDGs は、2016 年から 2030 年までの 15 年間での達成を目指した 17のゴールおよび 169 のターゲットで構成されている。2015 年に、ニューヨークの国連本部で「国連持続可能な開発サミット」が開催され、「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」が採択された。このアジェンダの中核となったのが SDGs である。
その後、世界各国が SDGs の達成に向けて動き出している。日本も、 2016 年も総理を本部長とし、全閣僚を構成員とする「SDGs 推進本部」を設置し、「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」が決定された。
また、ESG 投資(Environment、Social、Governance に関する情報を考慮した投資)が活発化し、企業の SDGs への取組みの後押しとなっている。長期的投資を行う機関投資家は、企業の持続可能な発展の判断基準として、企業の SDGs への取組みに関心がある。
SDGsの作成に至る流れ
SDGs は 1992 年の国連環境開発会議(リオ・サミット)以降、環境と開発のあり方が検討されてきた流れで作成された。2012 年の国連持続可能な開発会議(リオ+ 20)の会合開催を控えた準備会合の際、コロンビアが提案し、グアテマラが支持する形で SDGs が提案され、リオ+ 20の目玉となる成果としてSDGsが注目されるようになった。
この流れに合流したのが MDGs である。MDGs は 2000 年の国連ミレニアム・サミットでまとめられたミレニアム開発目標である。同サミットでは、平和と安全、開発と貧困、環境、人権とグッドガバナンス、アフリカの特別なニーズ等を課題として掲げ、国連ミレニアム宣言をまとめた。この宣言とそれまでの国際開発目標を統合し、MDGs が作成された。 MDGs は 2015 年が達成期限であり、後継となる目標の議論がなされていたが、SDGs の検討が活発となり、SDGs が MDGs の後継の役割を得た。
構成する要素の「広汎性」と「普遍性」
SDGs の要素の特徴として2点をあげる。第1 に、SDGs が扱う範囲に「広汎性」がある。SDGs と MDGs が示すゴールの対応を表 1 に示すが、 MDGs を取り込むことで、環境と経済の側面を中心に検討されてきた SDGs のゴールは社会面を広く具体化したものとなった。 第 2 に、途上国だけでなく、先進国も含めたすべての国やあらゆる人々が関連するゴールとターゲットを扱う方針で作成されており、「普遍性」がある。例えば、「8.働きがいも経済成長も」のターゲットでは「8.1各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる」と表記されている。
表1 MDGsとSDGsのゴールと環境・経済・社会の側面との対応
MDGs | SDGs | ||
---|---|---|---|
環境 | 7. 環境の持続可能性の確保 | 6. 安全な水とトイレを世界中に 7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに 11. 住み続けられるまちづくりを 13. 気候変動に具体的な対策を 14. 海の豊かさを守ろう 15. 陸の豊かさも守ろう | |
経済 | - | 8. 働きがいも経済成長も 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう 12. つくる責任 つかう責任 | |
社会 | 1. 極度の貧困と飢餓の撲滅 2. 普遍的初等教育の達成 3. ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上 4. 乳幼児死亡率の削減 5. 妊産婦の健康の改善 6. HIV /エイズ、マラリア及びその他の疾病の蔓延防止 8. 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進 | 1. 貧困をなくそう 2. 飢餓をゼロ 3. すべての人に健康と福祉を 4. 質の高い教育をみんなに 5. ジェンダー平等を実現しよう 10. 人や国の不平等をなくそう 16. 平和と公正をすべての人に 17. パートナーシップで目標を達成しよう |
SDGsの重要な理念
SDGs においては、「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」に示されている理念が重要である。表 2 に重要な3つの理念を示す。
「大胆かつ変革的」という理念は、SDGs では達成が容易ではない高い目標を掲げていること、そして目標達成のためには、これまでの取組みを SDGs に関連づけ、漫然と継続するだけでは不十分であることを示している。「誰一人取り残さない」はいわゆる社会的包摂の理念である。一部の強者が成功していくことで平均を引きあげたとしてもそれはSDGs を達成したことにならないこと、弱者が目標を達成することを優先して実施するためには、弱い視点で目標達成の方法を考える必要があることを強調している。「統合され不可分」とは、ある目標の解決が別の目標の解決を阻害するというトレーオフが発生しないようにすること、そしてある目標が別の目標の解決を促進するというようなシナジーを発揮させることを示している。
「SDGsウオッシュ」と言われないように
SDGs の活用において注意すべきは、SDGs ウオッシュにならないことである。SDGs ウオッシュとは、見せかけだけの SDGs の利用のことを揶揄する表現である。ホワイト・ウオッシュ(漂白)をもじって、見せかけだけの環境配慮がグリーンウオッシュと言われることがあるが、SDGs ウオッシュも同様である。SDGs ウオッシュと言われる例を示す。
- きれいなイラストや言葉で飾って、イメージを訴えるだけで、内容がない。
- これまでの取組みを SDGs のゴールと紐付けて、ラベルを貼ってみせるだけで、新たな行動や取組みを創造していない。 ・SDGs への貢献・達成において、取組むべき重要な課題があるにも関わらず、そのことを明らかにせず、その解決を検討しない。
- 課題分析や目標設定に根拠がなく、思い込みで取組みを検討している。例えば、二酸化炭素の排出を半分にするといいつつ、何をして減らすか根拠がない。
- 一部の専門家や管理者だけで SDGs が検討され、その根拠や内容を住民あるいは市民が知らず、関係していない。等
表2 「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」の重要な理念
キーワード | 理念の記述 |
---|---|
大胆かつ変革的 | 我々は、人類を貧困の恐怖及び欠乏の専制から解き放ち、地球を癒やし安全にすることを決意している。我々は、世界を持続的かつ強靱(レジリエント)な道筋に移行させるために緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとることを決意している。 |
誰一人取り残さない | 偉大な共同の旅に乗り出すにあたり、我々は誰一人取り残さないことを誓う。人々の尊厳は基本的なものであるとの認識の下に、目標とターゲットがすべての国、すべての人々及び社会のすべての部分で満たされることを望む。そして我々は、最も遅れているところに第一に手を伸ばすべく努力する。 |
統合され不可分 | これらは、すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性と女児の能力強化を達成することを目指す。これらの目標及びターゲットは、統合され不可分のものであり、持続可能な開発の三側面、すなわち経済、社会及び環境の三側面を調和させるものである。 |