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バックキャスティング

作成: 白井 信雄

フォアキャスティングとバックキャスティング

長期的な視点から、将来に向けた対策を検討する方法には、大きくフォアキャスティング(forecasting)とバックキャスティング(backcasting)の2つの方法がある。
フォアキャスティングの方法では、対策を実施しないケース(BAU:Business As Usual、成り行きの将来)と対策を実施する複数のケース(代替案)を設定し、各ケースにおける対策効果や実現可能性等を評価項目として、代替案を評価し、選択するというような方法がとられる。
これに対して、バックキャスティングでは将来における、あるべき姿(ビジョン)を設定し、その達成の実現経路(パス)を描く。バックキャスティングにおいても、将来に至る経路には代替案があり、その経路の評価・選択を行うが、(現在から将来ではなく)将来から現在を逆方向で描くことで、フォアキャスティングとは異なる経路を描くことができる。

バックキャスティングの必要性と具体的な方法

一般的に10年後を目標年次とする計画は、将来像を定性的に描いたとしても、既に実施している対策を実行可能な範囲で積み上げていくフォアキャスティングである。計画に新たな対策を追加するとしても、その正当性が根拠不足とされ、実行可能性が重視され、社会転換を図るような、より抜本的で挑戦的な対策は追加されにくい。
バックキャスティングの方法をとることにより、あるべき姿の実現に向けた挑戦的な対策の正当性を確認し、その対策を計画に位置づけ、実行に向けて動き出すことができる。

図 バックキャスティングの考え方

例えば、気候変動への緩和策の計画は、2050年に温室効果ガスの排出量実質ゼロという目標を設定し、そのパスを描くという点で、バックキャスティングの方法をとることになる。ただし、バックキャスティングの方法は地域の地球温暖化防止計画において採用されているが、2030年という中間時点の数値目標を設定するだけにとどまり、そこに至る経路を明確にはしていない場合が多い。目標を達成するための実現経路と具体的な手順をロードマップとして示すことが必要である。また、ロードマップを絵にかいた餅にしないためには、その実効性を担保する仕組みや組織、人を確保することが必要となる。

参考文献

  • 松浦正浩,2017,トランジション・マネジメントによる地域構造転換の考え方と方法論,『環境情報科学』46(4)
  • 倉阪秀史,2017,未来ワークショップ-2040年の未来市長になった中高生からの政策提言,『環境情報科学』46-4
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