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リジェネラティブ

作成: 鈴木 菜央

リジェネラティブとは

「リジェネラティブ」とは「再生的」を意味し、命を再生し、その命がほかの命を再生するつながりをつくることである。リジェネラティブ〇〇のように、なんらかの分野と組みあわせて使われるが、概念単体では「リジェネレーション」(再生)を用いる。
求められている持続可能性の実現のためには、生き物を含む環境そのものへの負荷・破壊を減らすだけでは足りず、すべての生命はつながりの中で存在するという前提で生命を癒やし育むことを通じて、私たちが直面している課題を乗り越えようとする考え方。ポール・ホーケン(2022)は「あらゆる行動や決定の中心に、命を据えること」と定義している。「リジェネラティブ」の概念は、思想的に探求されているだけでなく、さまざまな実際的分野で発展・展開している。リジェネラティブ農業、リジェネラティブ林業、リジェネラティブ漁業などを中心に、リジェネラティブ建築、リジェネラティブ観光など。

図 Reed(2007)を基に筆者訳

リジェネラティブのはじまりと今後

「リジェネラティブ」の概念は80年代後半に生まれた「リジェネラティブ農業」という考え方や実践に遡る。第二次世界大戦後、世界に急速に広がっていった化学的・工業的な農業の発展と大規模化による耕作地の爆発的な拡大やその結果としての森林消失、動植物の絶滅、土壌劣化など、人間社会・経済の繁栄の前提である環境全体の急速な消失と劣化が進んだ。そのためにも、環境を破壊し生態系から奪う農業から、草木や微生物の力を借りつつ、土壌を養い命が繁栄する農業としてリジェネラティブ農業が提唱、実践されたのだ。その背景としては、人類が地球環境や生態系に与えている負のインパクトが限界に達している中、従来のサステナビリティを実現するプロセスである、「CO2排出量の削減」や「グリーン」(環境配慮的)という、悪影響を減らしていくアプローチでは、真に持続可能な社会をつくることはできないという議論がある。つまり環境への影響が少ない、または環境への影響をゼロにすることを目指すことはまったく十分でなく、私たちは自然に働きかけて修復し、(私たちを含む)あらゆる命のつながりを理解、尊重し、積極的に多様な生命のつながりを育み、繁栄を手助けする経済と社会の実現が必要だ、というのだ。(サステナビリティとリジェネレーションの比較をまとめた図を参照)

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