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ESG投資
ESG投資とは
「ESG」とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉である。2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定とともに、近年、大変注目されている。Eは、地球温暖化対策、気候変動対応、資源循環・廃棄物削減、自然環境・生物多様性の保全などである。Sは、人権の尊重、安全・安心・快適な社会、地域社会貢献、ダイバーシティなど多方面にわたる社会的課題である。Gは、透明な経営、法令順守などである。
サステナビリティを目指すなかで、このESGに取り組む事は今や必須である。すなわち、ESGの取り組みが高い企業は持続的な成長が期待でき、それが低い企業は持続的成長が望めないとも言える。
投資家が企業に投資をする際に、かつては財務的な指標が主であったが、近年はESGが投資の判断基準となってきた。また一方で、投資家が企業の環境問題や社会課題(ESG)を評価し、投資行動をすることで、環境問題や社会課題への対応を進めることにも繋がる。このように投資家がESGの観点で投資することをESG投資と呼んでいる。
ESG投資は、企業のサステナビリティの取り組みを加速させる
ESG投資の多くは、日経平均、TOPIXなどと同様なインデックスによって行われ、グローバルなESG投資インデックスとしては、DJSI (The Dow Jones Sustainability Indices)、MSCI(Morgan Stanley Capital International)、ESGRating、FTSE4Goodなどがある。
投資家がESG投資を行うということは、上場企業など金融市場で評価される企業においてはESGの取り組み(ESG経営などとも呼ばれている)を進めていかないと評価が高まらない。企業がESGの取り組みを進め、投資家に評価されると(実際には格付け評価機関が企業を評価されることが多い)、ESG投資のインデックスに組み入れられる。すなわち、ESG投資のインデックスに組み入れられた企業は、ESG経営(ここではCSR経営と同義とする)が高いとも言える。WebサイトやCSRレポートなどに、インデックスに組み入れられたことを記載している企業が多い。
ESG投資のきっかけ
ESG投資が広く認知され、拡大していくきっかけとなったのは、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEPFI: UNEP Finance Initiative)が2006年に出した「責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)」である。原則は6項目からなるが、投資家に対し、企業の分析や評価を行った上で長期的な視点を持ち、ESG情報を考慮した投資行動をとることを求めるものである。つまりは、投資家として環境問題や社会課題に対する責任ということである。
[責任投資原則]
- 投資分析と意思決定のプロセスにESGの課題を組み込むこと。
- 活動的な株式所有者になり、株式の所有方針と所有慣習にESG問題を組み入れること。
- 投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求めること。
- 資産運用業界において原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行うこと。
- 原則を実行する際の効果を高めるために、協働すること。
- 原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告すること。
世界的にESG投資額が拡大しており、日本では、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF: Government Pension Investment Fund)が2017年に年金積立金の運用をESG評価に基づき行うことになってから拡大している。

ESG投資の考えは古くからあった
PRI以前から責任ある投資行動の考えはあった。
1920年代にはキリスト教はその倫理的観点から、武器、ギャンブル、たばこ、アルコールなどの産業は投資対象から外していた(ネガティブ・スクリーニングと呼ばれる)。
1990年以降(特に2000年代に入って)、投資家が、財務的指標だけでなく環境や社会への取り組み(CSR)においても評価するようになり、SRI(Socially Responsible Investment)と呼ばれていた。ESG投資の原型とも言われる。
日本では1999年に、日興證券から「エコ・ファンド」、損保ジャパンから「ぶなの森」という企業の環境経営を評価して投信・運用するファンドも設定された。「ぶなの森」は、運用開始から20年を迎えるが、環境問題に特に積極的に取り組む企業を投資対象とし、中長期的な視点で投資先企業を選定することで、安定した運用実績を目指している。直近の実績でも、基準価額はベンチマークとしているTOPIX(東証株価指数)の推移を上回っている。また、損保ジャパンによるESG投資商品は受託残高が1,000億円を突破するなど、国内でもESG投資が拡大している。
地域の活性化にも繋がるESG
ESG投資は株式を中心とした投資運用であるが、金融機関が企業に融資を行うことに対してもESGの観点を含めることで、サステナビリティへの取り組みは促されるはずである。特に日本では、地域金融機関は地域企業への融資を行い地域経済の発展に寄与している。現在、環境省や金融庁が、地域金融機関がESGの観点を考慮して融資する「ESG地域金融」の促進を図っている。
参考文献
環境省WebサイトESG地域金融(2023年1月20日最終閲覧)原田哲志(2022)「ESG投資の近年の進展,ニッセイ基礎研レポ-ト」(2023年1月20日最終閲覧)GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)(2020)GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW 2020(2023年1月20日最終閲覧)