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ZEH・ZEB
ZEH・ZEB
住宅や商業施設、学校、病院などの建築物は暖房や冷房設備、給湯器、換気扇、照明など多くの設備機器が導入され、人々が住まう住空間や業務を行うオフィスの快適な環境を維持するために電気やガスなどのエネルギーを大量に消費している。
そのため、各種建築物において省エネルギー化を進めるだけではなく、再生可能エネルギーを導入することによって、運用時におけるエネルギー収支を実質ゼロにするという概念が整備され、住宅についてZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)、一般建築物についてZEB(ネット・ゼロ・エネルギービル)と呼ばれるようになった。
住宅や建築物においては、大量にエネルギーを消費し、それに伴いCO2を排出していることからカーボンニュートラルに向けた国の施策として、ZEHやZEBの普及が図られている。
ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギーハウス)
ここでは、具体、ZEHについて解説する。住宅にはさまざまな設備が導入され、使用段階において消費されるエネルギーは暖房・冷房のほか、風呂や調理などに用いられる給湯、照明など多岐にわたる。
ZEHでは住宅自体の性能と設備機器の性能向上により、エネルギー消費量を極力削減することを求めている。ここでは、ZEHに関わる住宅の性能向上と設備の視点より、ZEHについて具体解説する。
ZEHに関わる主な住宅の性能は、住宅の熱の伝わり方を数値化した外皮平均熱貫流率(UA値)と呼ばれる断熱性能があり、値が小さいほど断熱性能が高い住宅となる。地域により異なるが関東平野部であれば、標準のものでUA値=0.87以下、ZEH性能の住宅であればUA値=0.60以下となる。UA値を向上させるためには壁、屋根、床に高性能な断熱材を布設し、断熱性能の高い複層ガラスを用いた窓を導入することで住宅全体の断熱性能を向上させることができ、エアコンなどの暖冷房設備の消費エネルギー量を低減することに貢献できる。

次に、エアコンや給湯器などの設備については、高性能の設備を導入することでエネルギー消費量の削減に貢献できる。例えば、空気中から熱を集め熱エネルギーとして利用するヒートポンプなどの技術を適用させたエアコンや、水素などの化学エネルギーを直接エネルギーに変換する燃料電池を用いた給湯器、照明設備ではLED照明など、高性能の設備を導入することで更なる省エネルギー化を図り、使用時のエネルギー消費を極力低減することが可能となる。そして、太陽光発電パネルなどの再生可能エネルギーを導入し、使用時の消費エネルギー量を全量賄うことができればZEHとなる。
ZEHの普及状況と将来的な目標として、2020年のハウスメーカーが新築する注文住宅においては、約56%がZEHとなったことが公表されている。さらに、2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画においては2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能を目指すことが政府目標として掲げられており、更なるZEHの普及が期待されている。
■ZEB(ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギービル)
ここでは、具体、ZEBについて解説する。ZEBはネット・ゼロ・エネルギービル、つまり住宅以外の用途で用いられる建築物を対象にしたものである。概念としては、使用時のエネルギー消費量を全量再生可能エネルギーで賄い、エネルギー収支ゼロを達成した建築物となる。ただし、エネルギー消費の形態や量が住宅とは異なり、オフィスであれば照明・コンセントや冷房などの熱源に起因するエネルギー消費量が大きくなるなど、建物用途、また、建物規模によってエネルギー消費の用途や量が異なることを理解することが重要である。
各建物用途でエネルギー消費の用途や量が異なることから、ZEBにおいてはZEB、NearlyZEB、ZEBReady、ZEBorientedの4つのランクがあり、それぞれの建築物において一定のエネルギー削減努力をしたものについてZEBの認定が受けられる制度となっている。
ZEBの普及状況と将来的な目標として、公的な資料として公表されている最新のデータでは2019年度累計323物件となっており、2030年目標は、新築建築物の平均でZEBを実現すると野心的な目標が政府により掲げられている。


参考文献
経済産業省 ,ZEH に関する情報公開について経済産業省 ,ZEB に関する情報公開について経済産業省,令和元年度 ZEB ロードマップフォローアップ委員会とりまとめ愛知県 ,ZEB(Nearly ZEB)の運用実績 , ZEB ランク(種類)