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環境エンジニアリング

マイクロプラスチック

作成: 真名垣 聡
八十歩奈央子

環境中のマイクロプラスチック

プラスチックは年間に世界で3億トン生産され、その約半分は使い捨てである。廃プラスチックのうち陸上の廃棄物管理からもれた部分が、降雨時の表面流出等により河川、そして海洋へ流入するため、陸から海へ流入するプラスチック量は世界で年間480万〜1270万トン、その結果海洋には5兆個、量にして27万トンのプラスチックが浮遊していると推定されている。
流入したプラスチックのうち、水より密度の小さいポリエチレンやポリプロピレンは浮いて輸送される。それらは海洋表層や海岸で紫外線にさらされ、劣化し、破片となっていく。劣化、破片化が進み5mm以下になったプラスチックをマイクロプラスチックと定義しているが、これらのプラスチック製品の破片の他にも、環境に放出される前から5mm以下の(一次)プラスチックもあり、プラスチックの原材料、洗顔料や化粧品の中のスクラブ等のマイクロビーズ、化学繊維の衣類の洗濯屑が該当する。

マイクロプラスチックの環境動態

環境中に存在する微細化したプラスチックは(1)移動、(2)生物蓄積といった分布に関して特徴を有する。ポリエチレンやポロプロピレンのような密度が小さくもともとは水に浮くプラスチックも、1mm以下に微細化すると生物膜の付着により沈降し、堆積物から検出されることが明らかになっている。また1mm〜5mm程度のポリエチレンは、急速に水平輸送される場合(長距離輸送)があり、人為活動の少ない極域でも検出され広範囲にわたる分布の要因となっている。結果として、日常的に使用する塩からもマイクロプラスチックが検出されることがある。

図  海洋のマイクロプラスチック(○はプラスチック破片)

また、生物蓄積においては、その大きさからプランクトンやオキアミといった低次の生物にも捕食等で取り込まれる。低次の生物はより高位の生物に捕食されうるため、結果として大型の魚類や、海鳥、クジラ等の海洋哺乳類にも蓄積が確認され、食物連鎖を通じたマイクロプラスチックの移動が示唆されている。この事実は、ヒトへの移行可能性を意味している。また、マイクロプラスチックは化学物質特に有機汚染物質、病原性微生物の輸送媒体としての役割を担っていると考えられており、その点も考慮に入れる必要がある。

マイクロプラスチックの今後について

プラスチックの便利な使い方に関して我々の知識は驚くほど進んだが、利用してまだ100年余りである。分解にかかる年月は数百年ともいわれているが、それはまだ確かめられない。従って、環境中での行方に関してはまだ判明していないことが多い。例えば、上述したように海に流れ込むプラスチック量に対する浮遊量はケタ違いに少なく、分解したのでなければ残りはどこかに存在している。底に沈んでいるのか、またはさらに小さくなって把握できないだけか。「小さくなってもプラスチックはプラスチックである」ということを考えて行動する必要がある。


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