Keywords
キーワードで知るサステナビリティ
環境エンジニアリング
気候変動と異常気象
気候変動と地球温暖化
気候変動(Climate Change)とは、気温および気象パターンの長期的な変化を意味する。これらの変化には、太陽周期の変化に伴う現象などの自然現象によるものもあるが、近年では人間活動が気候変動を引き越しているとされる。特に、大きな問題となっているのが、地球全体の気温が上昇している「地球温暖化」である。
地球温暖化は、温室効果によるものとされ、地球表面付近の気温が、温室効果ガスによる赤外放射吸収の影響を受けて上昇することを意味する。温室効果とは、ガラスでできた温室内の気温が高くなるのとほぼ同様の原理であり、温室効果ガスがガラスの役割を果たしている。一定濃度の温室効果ガスにより、地球表面付近の気温は適度に維持されるが、温室効果ガス濃度の上昇は、ガラスの厚みが増すのと同様に、吸収する赤外放射が増えて気温が上昇する。温室効果ガスの主要な成分である二酸化炭素 CO2の濃度は、1800 年以降、特に 1900 年以降に急激に上昇している。産業革命以降、化石燃料の使用で CO2 の排出量が増え、その増加は近年特に顕著である。CO2 濃度の上昇、言い換えると温室効果ガスの濃度の上昇につれて、地球平均気温の上昇が起きていると考えられ、地球の温暖化は人為的な要因で発生していると言える。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)では、温室効果ガスの大気中の CO2 、メタン、一酸化二窒素は、過去 80 万年間で前例のない水準まで増加しており、人間活動が20 世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な要因であった可能性が極めて高く、第 6 次報告書では温暖化への人間の影響には疑う余地がないとしている。
地球の平均気温の推移として、1890 年以降の気温の 1991 〜 2020 年の平均に対する差の推移を図 1 に示す。1980 年代以降に地球の気温上昇が顕著となっていることが確認できる。地球の平均気温は、近年になるほど上昇が加速しており、過去 100 年間における気温の上昇量は 0.74℃/100 年であるが、近年の 50 年間では 1.28℃ /100 年、25 年間では 1.77℃ /100 年と気温上昇率が大きくなる傾向となっている。

図1 世界の年平均気温偏差の推移(1890 〜2021年)
異常気象の定義と種類
気候変動や地球温暖化による影響として挙げられるのが、世界で頻発しているとされる異常気象である。
一般には、気温が上昇する現象を地球の温暖化現象として捉えられているが、実際には極端な気象状況が発生する等の現象が増えている。極端な気象変化として発生する異常気象とされるものの多くは、本来、気象擾乱が地球規模の流れの中で発達・退化しながら気象が刻々と変わる過程で特異的な条件が重なることで生じるものであり、自然変動の働きによって起こる突発的な現象である。しかしながら、近年の異常気象の頻発については、人為的な気候変動が異常気象に関係しているとの指摘もある。
異常気象には、気象に関係する機関ごとに定義があり、日本の気象庁では、気温や降水量などの異常を判断する場合、原則として「ある場所(地域)・ある時期(週・月・季節)で 30 年間に 1 回以下の頻度で発生する現象」を異常気象と定義している。また、世界気象機関(WMO)では、「平均気温や降水量が平年より著しく偏り、その偏差が 25 年以上に 1 回しか起こらない程度の大きさの現象」を異常気象と定義している。一般には、過去に経験した現象から大きく外れた現象で、人が一生の間にまれにしか経験しない現象を異常気象と呼ぶ場合が多い。異常気象として扱われるものとして、大雨や強風等の激しい数時間の現象、台風・ハリケーンの強大化、熱波や高温などが数日から 1 週間程度続く現象、さらに数か月も続く干ばつ、極端な冷夏・暖冬などが挙げられる。また、洪水や干ばつなどの気象災害も異常気象に含む場合がある。
IPCC によると、異常気象のうち、気温上昇や高温・熱波などは気候変動・地球温暖化の影響の可能性が高いとし、人間活動が異常気象を引き起こしている場合があるとされている。日本の気象庁では、毎週水曜日に前日までの 1 週間に発生した世界の異常気象や気象災害の状況を公表している。日本の気象庁が公表している異常気象の代表的なものの定義を以下に示す。
異常高温・異常低温は、それぞれの地点において、1991 〜 2020 年の 30 年間の平年値と標準偏差を基準にして、平均気温が異常かどうかを判断している。異常な高温の場合、熱波(ねっぱ、heat wave)と呼ぶ場合もある。熱波とは、その地域の平均的な気温に比べて著しく高温な気塊が波のように連続して押し寄せてくる現象である。熱波の定義は地域によって異なり、世界気象機関(WMO)の定義では、日中の最高気温が平均最高気温を 5℃以上上回る日が 5 日間以上連続した場合をいう。日本の気象庁の定義では、広い範囲に4〜5日またはそれ以上にわたって、相当に顕著な高温をもたらす現象を熱波と呼ぶ場合がある。
異常多雨・異常少雨も、それぞれの地点における 1991 〜 2020 年の30 年間の降水量の観測データを基準にして、降水量がある閾値(異常多雨基準)以上であるかで、異常を判断している。
気象庁がまとめた、2021 年に世界で発生した異常気象について図 2 に示す。2021 年の1 年間でも世界中で多くの異常気象が発生しており、特に、北半球の各地で異常高温や異常多雨が発生していることがわかる。

また、気象災害も多く発生しており、世界各地で多数の死者が出る被害となっている。
以上のように、世界各地で異常気象が発生し被害が出ており、その要因とされる気候変動・地球温暖化への対策が急務とされている。
関連するキーワード
世界の平均気温、IPCC、ミランコビッチ・サイクル、平年値