Keywords
キーワードで知るサステナビリティ
環境エンジニアリング
再生可能エネルギー
再生可能エネルギー、自然エネルギー、都市エネルギー
再生可能エネルギーは、その名前(再生可能)の通り、使っても再び元に戻って使えるようになる、枯渇することがないエネルギーのことである。
ここで再生可能には2つの場合がある。1つは「自然の太陽・地球物理学的・生物学的な資源に由来し、人間が適正に利用すれば自然界によって再生される」場合である。自然界で再生されるエネルギーを「自然エネルギー」といい、太陽光、太陽熱、風力、水力、地熱、波力、温度差、バイオマス等が相当する。
もう1つの再生可能な場合は人間活動が稼働する限り発生するということで、これに相当するものとして廃棄物エネルギーや下水廃熱等があり、これらは「都市エネルギー」といわれる。
また、再生可能エネルギーに対して、「枯渇性エネルギー」という言葉がある。石油や石炭、天然ガス等の化石燃料のことで、一度使ったら元には戻らず、枯渇していく。化石燃料は元をたどれば、植物や動物の化石が変化したものであるが、その生成には数千万〜数億年という膨大な時間がかかり、利用に再生が追いつかない。
再生可能エネルギーのことを「地上資源」、枯渇性エネルギーのことを「地下資源」ということもできる。地上資源のうち地熱を除く自然エネルギーの源は太陽から供給されるエネルギーである。太陽光発電や太陽熱はもとより、風力や水力も太陽エネルギーの供給によって生じる大気や水の循環から、エネルギーを取り出すものである。バイオマスも太陽光による光合成で生成されたものである。

これに対して、地下資源は地下から掘り出して利用するもので、掘り出した分だけ減少していく。また、もともと地上になかったものを地下から掘り出し、その燃焼によって生じるガスや残渣が地上に放出されるために環境汚染や気候変動等の地球の地上環境の変化が生じる。
再生可能エネルギーの価値の変化(時代の写し鏡)
日本の場合で時代変化を示す。日本の江戸時代には、熱源は里山から採取された薪や炭、光源は蝋や菜種油、魚油等、動力源は人力や牛、馬等の他、風車や水車等というように再生可能エネルギーが利用されてきた。しかし、明治維新より石炭、戦後復興で石油が使われるようになると、再生可能エネルギーの利用が激減した。蒸気機関の発明が大量生産と大量消費を可能とし、「工業化と都市化」といった社会変動、すなわち産業革命に起因する近代化が世界に広がったためである。これにより、再生可能エネルギーは石炭や石油に比べて、市場価値が低いとみなされた。
しかし、1970年代の石油危機、1990年代以降の気候変動の問題等が顕在化することで、再生可能エネルギーの持つ価値が見直されてきた。石油危機においは石油に代わる代替エネルギーとして、気候変動に対しては二酸化炭素を大気中に増やさないクリーンなエネルギーとして、再生可能エネルギーの価値が高まった。

図2 再生可能エネルギーの意味の時代変化
さらに、2011年に東日本大震災による福島原発事故が発生し、再生可能エネルギーの発電を促す固定価格買取制度等が整備されると、再生可能なエネルギーは、事故の影響が比較的小さい安全価値、あるいは非常用電源として使える防災的価値、さらには事業採算性のある事業を生み出す経済的価値を高めることになった。
今日では、再生可能エネルギーは環境、経済、社会、安全・安心といった多面的な価値を持つものとして、普及が進められている。特に、2050年のゼロカーボンを実現するためには、省エネルギーとともに再生可能エネルギーの最大限の導入が必要となっている。
地域主体にとって身近にあり、制御可能な技術
化石燃料といった地下資源、さらには高度な管理を必要とする原子力によるエネルギー供給は、エネルギーの生産と消費の関係を切り離し、エネルギーを消費者や地域政策から見えない、知らない、選択できないものとしてしまった。このことがエネルギー供給における環境や社会経済への影響に対する無関心や無責任をもたらしてきた面がある。これに対して、再生可能エネルギーは大量の安定供給を求める市場経済においては扱いにくいが、自分たちの身近にあり、制御可能なエネルギーである。身近で制御可能な技術という特性を持つゆえに、再生可能エネルギーは地域・市民主導による利用に適している。
近年では、技術開発や導入支援制度により、再生可能エネルギーの事業採算性が高まっている。このため、地域外の資本による大規模なメガソーラーの開発のように、地域住民に受け入れられない側面も現れている。つまり、「再生可能エネルギー=手ばなしで地域・市民主導に適した技術」ではない。再生可能エネルギーであっても、誰が何のために利用するか次第であり、両刃の剣であることに注意する必要がある。
参考文献
白井信雄(2018)『再生可能エネルギーによる地域づくり〜自立・共生社会への転換の道行き』環境新聞社田中充・白井信雄・馬場健司(2014)『ゼロから始める暮らしに生かす再生可能エネルギー入門』家の光協会安田陽(2021)『世界の再生可能エネルギーと電力システム全集』インプレスR&D