研究内容を一言で言うと?
環境心理学を専門としています。
人間と環境、相互に影響を与え合う関係性を理解しようという学問です。また、「持続可能な開発のための教育」(ESD)にも関心を持っていて、持続可能な未来を実現するためにどんな教育が必要なのか、研究や実践を重ねています。
大学教員として幸せだなと思う瞬間は?
教育者という立場からすると、授業で取り上げた話題が学生の知的好奇心を刺激し、主体的な学びを深めることに役立ったときや、自分が関わった学生の成長や、卒業生が活躍する場面を見ると非常に嬉しいなと思いますね。
研究者の立場からだと、心理学は日常生活のありふれた事象を対象としているため、時として「当たり前」と思われていることを、仰々しい心理学的な手続きでもって証明するようなこともなきにしもあらず、ですが、直観や常識で当たり前とされていることとは、実は違う、ということが発見できると嬉しいです。
好きな生き物は?
植物が好きです。
秋の風が心地良いお彼岸の頃になると、毎年、忘れずに赤い花を咲かせる曼珠沙華(ヒガンバナ)に「暑さ寒さも彼岸まで」という諺を思い出されるとき、枯れたと思って長らく放置していた古木から新芽が出ていることを発見したとき、夏の時期には虫に葉っぱを食いつくされて丸裸にされた蔓薔薇(ツルバラ)が、初冬の寒さで虫がいなくなり、これ幸いと元気に花をつけたときに、植物の営みの偉大さに心動かされます。
一番影響を受けた本を教えてください
カズオ・イシグロさんの『わたしを離さないで』と高草洋子さんの『びんぼう神様さま』です。『わたしを離さないで』は、人間の存在価値や人生の意義を再考する示唆に富んだ作品です。『びんぼう神様さま』は、貧乏神が住みついた家の話です。貧乏神が住み着くとどんどん家が貧乏になっていくにもかかわらず、家主の松吉さんは忌み嫌うはずの貧乏神のために神棚をつくって、貧乏神をむしろ大切にしてくれるのです。なぜ?と惑っている最中、その家に、疫病神や死神が近づき、松吉さんの息子が病気になり死の淵をさまようことになります。息子さんを救うために、貧乏神が必死になって疫病神や死神を家から追い出そうと奮闘する、といった物語です。この本も、人の幸せや人との関わり合いについて、色々と感じるところがある一冊でした。
サステナビリティ学科を志す学生におすすめしたい映画
SF映画が好きです。例えば、1973年のアメリカ映画『ソイレント・グリーン』では、近未来、ニューヨークは人口が爆発的に増加して食糧難が起こるという話が描かれています。救世主として売り出された代替食品の原材料が想像を超えるアレだったというディストピア映画なのですが、物語で描かれている55年後というのが2022年、つまり今で、ウクライナ問題による世界的な食糧難と符合するリアルな話になりつつありますよね。記憶の売り買いができるという設定の1990年のアメリカ映画『トータル・リコール』や、犯罪予知をテーマにした2002年のアメリカ映画『マイノリティ・リポート』も、科学技術の進歩で実際近づいていっているのではないかと感じることがあります。
サステナビリティ学はこれからの社会のありかたを予想する学問でもあるので、SF映画にはヒントがあるように感じています。