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サーキュラーエコノミーとシェアリングエコノミー

作成: 白井 信雄

ビジネスとしてのサーキュラーエコノミーへ

サーキュラーエコノミー(循環型経済)は、大量生産・大量消費・大量廃棄型の一方通行の経済社会活動を改め、3R(リデユース、リユース、リサイクル)を推進するともに、新たなビジネスモデルを創出し、循環と経済成長の両立を図る考え方である。
サーキュラーエコノミーの考え方は新しいものではなく、例えば、経済産業省では1990年代からリサイクル産業の集積による地域産業の振興を図るエコタウン事業が推進されてきた。近年では、EUの2015年と2020年の「サーキュラーエコノミー行動計画」に示されているように、デジタル技術の導入とグローバルなレベルで横断連携を進めることにより、大企業を中心としたグローバルな視点での経済政策という色合いが強く打ち出されている。また、気候変動対策が強化されるなか、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの同時実現が強調されるようになっている。
EUにおいては、「持続可能な製品(Sustainable Product)」に関する政策が導入される予定であり、日本の産業界ではEU市場から排除されないような対応が必須となっている。

サーキュラーエコノミーのビジネスモデル

サーキュラーエコノミーのビジネスモデルは、モノの設計、生産、消費、廃棄の各段階において3Rへの配慮を行うものとして、多様な形で創出される(表参照)。「リサイクル材料の使用」、「製品自主回収等によるリサイクルの徹底」、「水平利用等の高度リサイクルの実現、最適なリサイクル」等のリサイクルを促進する取組の他、「長期使用可能な製品・サービスの設計」、「リース方式によるメンテナンスまでを含めた製品の活用」、「中古品のリユース」のようにリデュースやリユースに関するビジネスモデルもある。リース方式はオフィスのプリンター等で行われているが、リース会社がメンテナンスを行うことで、モノの長寿命化が図られている。

表 サーキュラーエコノミーのビジネスモデルの事例

シェアリングエコノミー

シェアリングエコノミーは、「インターネットを介して個人と個人・企業等の間でモノ・場所・技能などを売買・貸し借りする等のビジネスモデル」である。利用段階のサーキュラーエコノミーのビジネスモデルである。モノの所有を見直し、「脱所有」を進めることに特徴がある。
シェアリングエコノミーは、非稼働・遊休の資源の効率的な使用を促すことを狙いとして、インターネットを活用して、資源と利用者のマッチングを行うこと、定額制(サブスクリプション)で契約してお得感を出すこと、企業対個人だけでなく、個人間での資源の交換を促すことに特徴がある。
例えば、車、空き部屋、ペット、自動車、ボート、家、工具等がシェアの対象となっている。企業の持つ倉庫、トラック、オフィスといった非稼働・遊休の資源の交換、個人の持つスキル・空き時間等も交換の対象になる。
シェアリングエコノミーにおいては、非稼働・遊休の資源の利用を活発化させるため、経済面の効果が大きい。環境面ではプラスとマイナスの両面があるため、注意が必要である。環境面のプラス面は自分で資源を所有しないために無駄な使用を控える可能性があること、逆にマイナス面では需要が喚起され、必要以上に消費が創出されることがある。ビジネスモデルの個別について、環境面のプラスとマイナスの厳密な評価が必要である。

サービサイジング

シェアリングエコノミーが「脱所有」であることに対して、サービサイジングは「脱物質」によりリデュースを進めるビジネスをさす概念である。
「モノ(だけ)ではなく、サービスを提供することで、新たな付加価値を生み出すビジネスモデル」である。図に示すように様々なタイプのサービサイジングのタイプがある」。
サービサイジングの究極のタイプは、モノの生産・消費を無くすものである。音楽や映像の電子配信、チケットや通帳の電子化(チケットレス、ペーパーレス)がそれにあたる。
モノを完全に無くすのでないが、「モノをサービスとして売るタイプ」のビジネスもある。この例として、「あかりの機能提供型サービス」がある。LED照明器具をリースにして、メンテナンスを行うことも合わせたサービスを提供している。

ローカルな循環

サーキュラーエコノミーは、時代を先取りする新しいビジネスモデルということでもない。例えば、江戸時代には、古着を着ることが当たり前で、衣服の仕立て直し(リペア)と使いまわし(リユース)が行われていた。紙くずひろいや下駄の歯交換、燃え残ったろうそくの買い取り等もビジネスになっていた。江戸時代の3Rの優れた点は、地域に密着したローカルな循環であったことにある。グローバルな市場における生存戦略の手段ではなく、ローカルな循環による豊かな社会の創出という観点からも、脱所有や脱物質を考える必要がある。
例えば、京都市ごみ減量推進会議が運営している修理ナビサイト「もっぺん」は、市内の洋服や家具などの日用品からパソコン・時計といった家電の修理やリメイクやリユース(リサイクル)に携わるお店を紹介している。

図 サービサイジングのタイプ分けとビジネスモデル例

参考文献

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